持明院の妙蓮 2022
多頭蓮(たとうれん)という言葉を聞いたことはありますか?
多頭、つまり複数の頭を持つ蓮…というと、なんだか八岐大蛇とかケルベロスみたいなのを想起しますが、まさにその通り。
県の天然記念物にも指定されている妙蓮は多頭蓮の一種で、国内で見ることができるのは金沢の持明院(蓮寺)と滋賀県守山市の近江妙蓮公園の2か所だけ。
とても珍しく、貴重な種であることがよく分かります。
で、なしてその蓮のことについて偉人館の雑報で取り上げたのかというと、
実は持明院の妙蓮が天然記念物に指定されるきっかけとなった発表を行った研究者が、当館の偉人としているからです。
その名は、藤井健次郎(1866-1952)
日本の遺伝学研究の先駆者であり、世界的細胞学研究雑誌『キトロギア(CYTOLOGIA)』の創刊など、細胞遺伝学の発展に大きく貢献しました。
また、「遺伝子」という言葉をつくった人でもあります。
健次郎が帝国大学院時代に研究していたのが、故郷金沢の持明院の蓮でした。
まだ遺伝学が日本の大学になかった時代、植物形態学を先行していた健次郎は
①花群が2つ以上に分かれてたくさん花をつけること
②花弁が1500~3000枚とたくさんあるのは、おしべが花弁に変化するためであること
③めしべがないので実ができないこと
といった特徴を植物学会で報告し、その結果、持明院の妙蓮は天然記念物に指定されました。
―というような経緯から、偉人館とはご縁のある持明院の妙蓮。
開花時期は2週間程度と限られているので、見学&撮影のために自転車🚴で持明院まで向かったわけですが…
アッツいわ~~~~~~~~~~~!!?!!
猛暑も猛暑。脳みそが蓮の花みたいにかっぴらくんじゃないかと思いながら偉人館から自転車を漕ぐこと約20分。
到着!
見てくださいよこの殺人的な青空を―というのは置いておいて、
持明院の歴史について触れておきましょう。
白髭山 持明院
弘法大師空海の創建と謂われる真言宗のお寺です。
本尊は不動明王で、9世紀頃の作。
かつては金沢駅付近にありましたが、昭和に入り現在の地(金沢市神宮寺3丁目12-15)に移転しました。
大正12年(1923)に「持明院妙蓮池」として国の天然記念物に指定されましたが、昭和46年の移転に伴い解除され、現在は県指定天然記念物となっています。
持明院の妙蓮には縁起があり、弘法大師が渡唐した際に天竺の般若三蔵法師から蓮の種を貰ったと伝わります。
世にも珍しい多頭蓮―持明院の妙蓮とはどのようなものか。
拝観料(大人300円)を払って、早速妙蓮池に向かいます。
蕾は普通の蓮と区別がつきませんね。これが開くとどうなるかというと、
こうなります。
いや、花びら多っ!!??!
ぱっと見、蓮といわれなければ蓮とは気が付かない見た目です。
これが1000枚以上の花弁を有する妙蓮か…と感動を覚えつつ、
「たまに池に落ちる人がいるからお気をつけて」
というお寺の方の説明の理由がわかるくらい、すぅーと花の方に吸い寄せられてしまいます。
(単純に暑くて倒れ掛かっていただけかもしれえませんが)
一通り拝観、撮影した後に、本堂で無料提供しておられたハス茶をいただきました。
爽やかな舌触りが煮詰まった脳みそにスー―ッと効いて…ありがたい。
今年の妙蓮拝観は8月11日(木祝)までとなっております。
ご興味のある方は是非一度持明院まで足をお運びくださいませ(#^^#)