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④平和の祭典(その2)

1952年(昭和27年)、ヘルシンキ大会。日本は戦後初めてオリンピックに参加を認められます。まーちゃんは選手団長として103人の選手役員を率いた。しかしピークを過ぎていた古橋廣之進……
田畑「知ったような口をきくな!」
ああ、すいません
――第40回「バック・トゥ・ザ・フューチャー」より

いだてん本編ではサラッと終わってしまった1952年ヘルシンキオリンピック。
実は、国会会議録の中にヘルシンキオリンピックに関するまーちゃんと大島のふたりの答弁が残されています。

というのも、オリンピックへの選手派遣について、費用や人数などが問題となり、本番2カ月前に国会で議題に上がりました。
そこで、田畑政治(日本体育協会専務理事)、大島鎌吉(毎日新聞社運動部副部長)ら関係者4名がヘルシンキオリンピック選手派遣問題に関する参考人として出頭します。

議題となったのは、
・オリンピック選手派遣に関する政府からの予算が非常に少ない(1500万円)
・募金が集まらない
・補正予算で増額させたい
・選手団百余名に対して、参加する役員の人数が多いのではないか

この中で、当時のふたり、特に大島のスポーツ及びオリンピックに関する思想が現れていますので、今回は国会答弁をテーマにヘルシンキオリンピック(準備段階)を眺めていきたいと思います。

なお、まーちゃん筆頭に回答が大変長いので、ところどころ中略「…………」します。(速記のため所々誤字脱字がありますが原文ママにしております)
本文を読みたい方はこちらもしくは下記下線からどうぞ。

さて、トップバッター田畑政治ことまーちゃんの答弁を見ていきましょう。

013 田畑政治

○田畑参考人 それではお答えいたしますけれども、まず最初に、オリンピツクは今度十六年ぶりで参加いたすのでありますけれども、それにつきまして、議会の皆様方に、非常に御熱意ある御後援をいただいたことについて、代表団一同を代表して、ありがたく御礼申し上げます。まあとにかく、今の派遣費と申しますか、補助金の問題でございますが、一番初めに私たちはアジア大会に千万円ということなれば、少くとも三千万円ぐらいは出していただけるのだろうというふうに思つていましたし、まあ私が個人的に大蔵大臣にお会いしたときにも、そのくらいのことはやむ得ないだろうという気持を、大蔵大臣は持つていたと私ははつきり解釈したのであります。しかし、…………今の日本の現状で、この程度に政府が出してくださるということも、皆様方の熱意のしからしむるところであつたと思つて、この点についても、私はありがたく思つております。…………従つて私たちが一生懸命で寄付金を集めれば、とにかく今の日本とすれば、決して少くない代表団を送れるということになつたについては、文部当局はもちろん、大蔵当局に対しても、非常に感謝している次第であります。

「16年振りのねー、オリンピックに参加するんだしねー、もっとお金出してもらえると思ってたんですけどねー…いや、もちろん大変なのは重々承知しておりますよ?皆様方の熱意と尽力のおかげで参加できることになったのは大変ありがたいですねぇ(にしても1500万円は少ないじゃんねー!!!)」(意訳)
所々費用に対し不満がダダ漏れなまーちゃん。

 …………前提として申し上げたいのは、オリンピックの代表団というものをつくることは、これはあくまで日本のオリンピツク委員会たる体育協会の責任においてやるものでありまして、これは政府その他の干渉というものは一切排除されなければならないと思うのです。ということは、オリンピックそのものは、政治的な介入を非常に神経質に拒否しておるのであります。…………私たちは、あくまでこれは体協の責任においてやつて行かなければならないと思つております。それゆえにこそ、私たちは慎重には愼重を重ねまして、代表団を決定しておるわけであります。

「オリンピックは政治の介入を極端に嫌ってますので、代表団選出は私ら体協でしっかり決めますので、先生方は日本のためだと思ってお金をだしてください(にしても1500万円は少ないじゃんねー!!!!)」(意訳)
となかなか強気な姿勢。

で、問題になっている代表団人数(特に役員)多くない?問題についての返答がこちら。

これは前の話なんですけれども、とにかくまだ公使館さえもできていないときに、たくさんのものを持つて行くということは、なかなかむずかしいだろう、昔みたいな代表団を持つて行くことは、次のメルボルンにしまして、今度の場合は、とにかくオリンピックにおいて優勝した歴史を持つているものが行くということならば、それでとにかく日本が、今度のヘルシンキのオリンピックにおいて、りつばなオリンピックをやろうという熱意だけは認められるのじやないか、そういうことに持つて行こうということであつたのです。

当初は少数精鋭にして、世界及び国内に日本の選手団の意地をみせようという方針だった様子。

…………マラソンとジャンプと競泳のチームをつくつて、選手と役員を入れて三十名になるチームだつたら一番いいんじやないかというふうな意見だつたのです。…………オリンピックには十六年間参加しておらず、また今度参加しないと、あと四年ブランクができて、参加しない種目は実際に非常なギャップができるから、陸上も全部参加したいという気持はありましたけれども、それ以上に、外部から、なるたけ多くやれということが一般の輿論になつて来て、三十人というのは非公式の話だつたのですが、その線がくずれて、だんだん選手団が多くなつて来たのです。

日本スポーツ界にとって、16年のブランクはあまりにも大きく、現在の国際スポーツ事情を知るためにもできるだけ多くの関係者を連れて行こうという方向になり、どんどんと参加人数が膨れ上がっていく形に。

…………サッカーとか、バスケットとか、ホッケーとか、水球というものは除外せざるを得なくなつて、…………しかし、これも全然行かないということになりますと、どういうことをやつているのか現状が何もわからぬというようなこともありますので、参加しない樋口から見学をふやす、連れて行くということが、今度の代表団の一つの異例なことであります。…………個人競技ならば一人行つても競技ができるから、役員をやるよりは選手をやつた力がためになるということの意見の一致を見まして、そういう種目からは一人ずつ選手を連れて行くということになつたのが、今度の代表団の編成の大体の経過であります。

予算不足の関係でメダルが期待できる陸上や水泳の一部を除いて、人数が増えてしまう団体競技は一律参加を見送りつつも、後学のためにオリンピックを見学させるために役員を派遣することに。
また、個人競技はメダル候補の有無に拘わらず、選手を参加させて経験を積ませる―体協としては、今回のヘルシンキオリンピックを、将来(のメダル)に繋げるためのステップと考えていました。

そうして日本の今度の役員が多いというお話、…………今言つた見学員が役員という範疇に入つて来ているので、…………実際問題で言つてみますと、そういうものをひつくるめても今度の代表場団の役員というものは、前から比べるとはるかに少いのです。…………政府の補助金さえも千五百万日くらいしかいただけないという現状ですから、とにかくすべてのことを切り詰め、ことに本部役員というようなものは、なるべく少くしなければならないということで、ぎりぎり結着の八名ということにしたのですが、この点は私は多いとは思つておりません。少な過ぎるという批評は受けても、多いという批評は受けないと思つております。…………

「役員は多いどころかむしろ切り詰めまくってるんだよ!お役人様が1500万しかくれないから!ケチくせえな!」(意訳)
とぶちまけて、最後をこう締めくくります。

陸上のことについて御質問があれは、一番権威の大島君がおりますから……。


大島には「諸外国の政府援助と募金はどうなっているのか」という質問が飛んできます。

022 大島鎌吉

○大島参考人 …………大体のことを申し上げますならば、イギリスとアメリカでは、まつたく民間の募金において選手が送られるということでございます。…………特にイギリスなどでは、体育協会が政府の補助金を——これは別の観点に立つのではありますが——拒否して、もつぱら民間の募金だけで行くというような態度を維持しておるところもあるのであります。これは、先ほどもちよつと言われましたが、スポーツが政治に支配されない、スポーツが政治に支配されるとうことは、スポーツの堕落であるという考えから行つておるのであります。アメリカのごときは、トルーマン大統領が一番最初に募金の何がしかの額に署名をいたしまして、それによりまして募金運動が全国的に広がつておる。もちろんアメリカの体育協会といたしましても、いろいろな催しものを行いまして、それによつて零細な金を集めて、非常に苦労をしておるということでございます。

米英は政府の援助を受けずに、募金と集金によってなんとかやっているとのこと。

これとはまつたく反対の形をとつておるのが、ソ連でございます。ソ連は、今回四十年ぶりで参加して参るのであります。御承知のように、ソ連の体育あるいはスポーツというものは、国家建設計画の中にも入つておりまして、…………国家の厖大なる予算で選手をつくり、かつ体育の振興をはかつておるのであります。

国家が主導して選手育成を行っているのが、ソ連。

韓国では、多少様子がかわつておりまして、占領上のいろいろな利害関係等も結びつきまして、もつぱらアメリカの兵隊が自発的にドルを集めまして、選手派遣の大部分の経費になつておるということであります。

当時は朝鮮戦争(1950-53)の最中であり、主導権は米軍にあるようです。

それからスイスだとかオーストリアなどを見ますならば、富くじをやつております。この富くじの中心機関は、体育協会の外郭団体でありまして、これが政府の許可を得まして富くじを発売し、その収益を選手派遣の費用に充てておるということであります。

トトカルチョ!!

従いまして、各国の状況は、それぞれの国の置かれておるところの立場によりまして、異なるわけでありますが、しかし、少くともオリンピック大会に選手を送ろうという気持は、すべて同じであろうと思うのでございます。
 …………近代のオリンピック大会が始まりましてから六十年間で、一番大きな大会といわれます四年前のロンドンの大会では、選手、役員が約六千人、参加国が六十箇国というのでありましたが、今回は参加国が七十一箇国、選手、役員は八千五百から九千人というような、非常な厖大な数になつたのであります。各国それぞれその数字から見ますならば、各国とも、それぞれ従来より以上の財政的な困難を考えながら選手を派遣しておるということが、明らかであります。

第二次世界大戦という世界中が大きな惨劇を受けたにも拘わらず、1948年ロンドンオリンピックが過去最大規模の大会となった事実は、色々と考えさせられます。

そしてまた、「スポーツに政治は不介入」とする方針である以上、規模が巨大になるにつれて莫大な経費が必要となり、その資金繰りに各国とも苦心しているという、近代オリンピックの抱える問題点が浮き彫りになっています。

…………この戰争を通じますところの十六年間の空白の時代において、選手の実力もかなり低下いたしました。…………このことは、單にスポーツばかりじやなくて、わが国の文化全般にいわれることでありまして、今日社会に起つておりますところのあまり好ましからざるいろいろな事象というものが、やはり戰争の不安から、また社会の不安から起つて来たということは、明らかな事実であります。従いまして、今回のオリンピック大会で、…………私は決して、りつぱなといいますか、過去に示したような成績が上るとは考えられないのであります。

日本の場合、戦争による資源・人材の枯渇や国際スポーツ界からの孤立という問題が長くのしかかっており、大島もまーちゃん同様ヘルシンキでの業績は振るわないだろうと見なしています。
そして、ここから大島のオリンピックに対する持論がはじまります。

しかしながら、今回日本がオリンピックに参加する意義は何であるかと考えますならば、それは戰後の新しい日本の青年が何であるかということを、各国に見せることであろうかと思うのであります。スポーツをやつております選手の諸君は、非常に純真でありまして、無垢であります。スポーツというような性質のものに携わつております関係から、常に向上の意欲に満ちておるわけでありまして、これらの現在われわれが持つておりますところの、将来の日本を背負い立つ素材を外国の連中に見せるということに、大きな意義を感ずるのであります。…………私たちは、この百名内外の選手が、日本の代表として、世界各国の青年たちとヘルシンキでは十分に親好を交えて来てほしいと思うのであります。

大島は、今大会への参加の意義を「青年同士の親交」に見出していました。
結果を残すことよりも、将来の選手達にとって交流の場になることを重要視しているのは、青少年育成に重きを置いている大島らしい観点ですね。
さらに持論は展開していきます。

 私は、これに関連いたしまして、オリンピックの目標とするところのものを考えますときには、これは平和運動であろうと思うのであります。現に私も、過去において選手の端くれをやつておりましたが、もし私が戰争に行きまして、敵の捕虜が来る、その捕虜の中に、私がかつて神宮の競技場、あるいは甲子園の運動場などで一緒に競争した選手がいたとしますならば、その捕虜に銃殺の命令が下りましても、私は引金が引けないだろうと考えるのであります。戰争というのは、時の政府が支配階級と結びつきましてやるものでありますが、しかし、スポーツというものは、人間と人間とが結びつくものであると、われわれ考えるのであります。…………そういう意味におきまして、今回のオリンピック参加というものが、過去におけるものとは全然性質を異にしておるものである、かように考える次第でございます。

「スポーツというものは、人間と人間とが結びつくものである」
スポーツの持つ可能性と“平和の祭典”としてのオリンピックに参加することの意義―そのことを国会という日本の政治を担う人々の前でしっかり伝えたかったと思われます。

「今回のオリンピック参加というものが、過去におけるものとは全然性質を異にしておるものである」
この発言は、戦前の“国の威信をかけた勝利至上主義”から、本来のオリンピックである“参加することに意義がある”という方向に軌道修正をかけたいという思いも含まれていたのかもしれません。

大島の持論は更に近代オリンピックの課題にまで波及していきます。

しかしオリンピックは、御承知のように六十年前にでき上つたものであり、六十年前の考え方と六十年前の機構が、そのまま踏襲されておる関係から、今日の事態にそぐわないというような事態が起つて参つておりまして、これがいろいろ問題を持つておるのであります。私は、まずく行けば、オリンピックは今回をもつて瓦解するのではなかろうかとさえ思うのであります。

(!?馬鹿!余計なこと言うんじゃない!!)
と「いだてん」のまーちゃんなら突っ込んでくれそうな爆弾発言をぶっ込みます。

しかしながら、世界でこんな大きな運動はないと思うのでありまして、非常に大きなこのような運動が、でき得べくんば瓦解しないように、日本が考えておりますところの平和の思想をもつてこれをうまく貫いて行かなければならないと考えておるのであります。そういう意味におきまして、今回の代表団の皆様には、参加して勝つとか負けるとかいうようなことばかりではなくて、オリンピツクを世界の平和運動のためによくして行くというような努力を要請したいと思うのであります。このことは、今回送られますところのオリンピツクの選手諸君ばかりではなくて、われわれ国民も、ともにこのように考えておるような次第であります。

「今回の代表団の皆様には、参加して勝つとか負けるとかいうようなことばかりではなくて、オリンピツクを世界の平和運動のためによくして行くというような努力を要請したいと思うのであります。」
最早国会議員ではなく代表団(団長まーちゃん)に向けたメッセージをここで発信しています。

「オリンピックは今回をもつて瓦解するのではなかろうか」
補正予算をつけてほしいという話の中でこの爆弾発言。
これには思わず議員からも「どういう意味!?」と質問が飛んできます。
それに対する返答がこちら。

033 大島鎌吉

○大島参考人 …………大部分の国が、みなアマチュアの選手でありまして、スポーツを本業の余暇にやつておるというのが、みな集まつて来るわけであります。学生は学業を本業とし、余暇にスポーツをやる、そのような者が集まつて来る。それぞれ本業を持つているわけであります。ところがソ連の場合は、これと異なりまして、スポーツが本業であります。…………野球で申しますならば、六大学とプロの野球選手がやるということで、これはまつたく勝負にならないだろうと思うのであります。そういう関係から申しますならば、結局オリンピツクに勝つということが大きな目標でありますならば、金があつて人間がたくさんいるところが必ず勝つということで、その国のオリンピツク支配ということが成り立つわけであります。そうするならば、お金がなくて人間もないというところは、だんだん参加する意欲を失つて行くことになり、結局オリンピック存立の意味を失つて来るのではなかろうかと思うのであります。

勝利至上主義に走りすぎると、結局金と人間が多い国が上位を独占することになり、本来の意義を失うのではないか―
大島の懸念は、ソ連のように国家主導で本業の選手を育成する“プロスポーツ選手”の台頭でした。

「みなアマチュアの選手でありまして、スポーツを本業の余暇にやつておる」
こうした純粋にスポーツを愛好する人々の大会であることが“平和の祭典”としての根幹を担っていると考えていた大島にとって、政治や商業と密接に関係してくるプロスポーツ化は“オリンピックの死”に直結することを危惧していたのです。

…………過去につくられましたところのオリンピックの組織というものが、今回の大会で一応改組されるというようなことになつておりますが、しかし本質的にもつと切り下げて問題が研究され、討議されるときには、オリンピツクが二つの世界にわかれるというような危険性も、ここにあろうかと思うのであります。そういう意味で、私は先ほど、オリンピックは従来の意味では瓦解するのではないかというようなことを申し上げたわけであります。ただ、人間の希望というものは、平和についての非常にはげしい希望を持つておりますので、一時衰微した形をとりましても、再び盛り上つて来るという確信を持つておりますが、今回では、そういう形をとることもあり得るということを申し上げたのであります。

冷戦時代、米ソそれぞれのオリンピックに対する姿勢の違いが、やがて大きな亀裂を生むのでは無いか―そのとき、日本はオリンピックとどう向き合うべきか。
オリンピックの理想を追求し続ける闘いの後半生が、ゴングを鳴らしました。

このように、1950年代に入ると大島鎌吉と田畑政治が陸上と水泳それぞれの代表者としてスポーツ界を牽引していく立場になっていきます。
ただ、両者のスポーツやオリンピックに対する姿勢には大きな隔たりが…その点についてはまた次回以降にでも。

最後に、答弁の中で、まーちゃんらしい発言部分があったので引用しておきます。
(新聞で別の人間が団長として名を挙げられていたという質問に対しての回答)

048 田畑政治
○田畑参考人 団長は私なんです。少くもアジア大会と今度を通じて、君にそういういかがわしいことは絶対にないのだということだけなんです。従つて国会は、日本で一番偉いでしようが、国会がどうおつしやつても、オリンピツクのことは私たちがやりますということを、ここで申し上げたいと思います。ですから、私たちが一番の責任を持つわけで、愼重にやつていますし、今大岳君が言つたように、今の日本の一番代表的な青年を連れて行くわけであります。役員も、そういうふうないかがわしい者は、当然行くべきでありませんから、私たちが決定している者は、すべてそういう者は絶対にないのだということだけ、ここではつきり申し上げていいと思います。


次回 自由人 大島鎌吉

おまけ

このヘルシンキ大会の答弁の中で、大島が「東京オリンピック」についての展望を述べています。
そのやり取りについて、最後に紹介しておきましょう。

022 大島鎌吉
 なお、この次の次、一九六〇年のオリンピック大会を東京に招致したい、すなわち世界の平和運動を東京に持つて来たいというきわめて大きな希望を持つておりますときに、これらの問題につきましては、やはり国民の大きな支持を必要とすると思うのでありますが、国会におかれましても、その辺の空気はよく御了解願いまして、今後とも御努力願うようにお願いしたいと考えるのであります。…………
035 浦口鉄男
○浦口委員 本日の委員会の議事については、いろいろ御議論があつたようでありますが、とにかく日本の運動界における権威者に、われわれがお話を聞くことは、めつたにないわけですから、一つだけ御質問したい。それは、先ほど大島さんからもお話がありましたが、一九六〇年のオリンピックを日本に誘致しようという運動について、御意見を承つておきたいと思うわけであります。もちろん、これが決定するかどうかは、未知数でございましようが、かりに決定したと予想いたしますと、国家においても国民においても、進んで相当の負担をして、盛大なものにしなければならぬ、こう思うわけであります。そこで、本日おいでの方は、世界各国の運動界とも密接な関係がおありでございますので、こうした日本の主張に対して、世界はどういうふうな感情をもつて迎えてくれているか、そうしたことから関連して、一九六〇年に招致し得る見込みかどの程度あるか、またそれについて国会あるいは国民に対する御希望、あるいはこれが決定するのは、一体いつごろの総会、なりその他で決定することになるのかそうした点について、われわれの参考になるところをお聞かせ願いたいと思います。
036 田畑政治
○田畑参考人 …………私はもう日本が戰争をやつたので、オリンピックというものは、少くともぼくの生きているうちにはないものだと思つておりましたけれども、…………一ぺんきまつたものがその後やらないということは——今度のヘルシンキも、日本でやることになりまして、戰争で日本が放棄して、ヘルシンキでやるということになつたのです。ところが、戰争でできなかつたので、これを今度やつているわけなんです。一ぺんきまつたところでやらないというのは、今度ヘルシンキがやりますから、日本以外にはないわけです。従つて、日本がやるということは、非常に有望だろうと思う。ただ、いつやるかという問題は、今度一応出しておいて、来年議題にされましても六〇年に来るということは、実際として無理だと思う。来ても六四年ということになるだろうと思う。六四年ということになれば、割合確実——とは申せませんけれども、非常に有望だろうと思う。というのは、何といつてもオリンピックというものは、ヨーロツパ中心なんです。従つて今度のヘルシンキ大会の次のメルボルンが、東半球であるわけなんです。もう一ぺん日本でやるということになりますと、これはもう東半球で続けてやるとことになるから、六〇年は無理だという気持が非常に強いらしいのです。もう一つは、この前杉村陽太郎さんの努力で、日本のために讓つたローマが残つているわけです。ですから、ヨーロツパでやるということが案外有力で、六〇年に日本でやるということは、結局無理ではないだろうか。しかし六四年にやるということは、今出しておけば間に合わないことはない。米州も、三箇所ばかり有力に申し込んでいるわけです。それからメキシコが今非常にやつていますが、今度はおそらくヨーロツパで開かれるでしよう。

参考資料・文献
第13回国会 衆議院 文部委員会 第31号 昭和27年6月12日
https://kokkai.ndl.go.jp/txt/101305115X03119520612(参照2021-12-12)

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