特別展紹介(上) 天地人―木村栄がつなぐ天文学―
当館は平成5年(1993)に開館してから今年で30周年を迎えます。
開館当時は5名(高峰譲吉・木村栄・三宅雪嶺・鈴木大拙・藤岡東甫)だった偉人も今では38名という大所帯になりました。
後期企画展は開館30周年を記念して、オープニングメンバー(初期メン)である木村栄をテーマとした特別展「天地人―木村栄がつなぐ天文学―」を8月5日(土)から11月26日(日)まで開催中です。
…いや、はじまって一か月以上経過しとるやないかーい
ハイ…スミマセン…
最近更新が滞りまくりの雑報でしたが、そろそろ本格的に再開していきます!(本当に!)
ということで、今回は特別展について、内容と見どころを紹介してまいります。
ですが、
今回の「上」では、展示のテーマやタイトルについてグダグダ語ってますので、展示内容・見どころについては「下」をご参照くださいm(_ _)m
はじめに、木村栄の略歴を載せておきましょう。
木村栄
天文学者
明治3年(1870)9月10日生まれ
幼少時に篠木家から親戚・木村家の養子となる
養父・民衛(私塾の先生)からスパルタ教育を仕込まれる
8歳で塾の生徒に授業を行う
14歳頃に金沢へやってきた西田幾多郎と親友になる
石川県専門学校に入学し、鈴木大拙や藤岡作太郎と交友を深める
第四高等中学校本科に合格し、主席で卒業
帝国大学理科大学星学科、大学院に進学
水沢の臨時緯度観測所所長となる
Z項を発見し、その謎を生涯追い続ける
水沢が国際緯度観測中央局となり、栄が委員長に就任する
第一回帝国学士院恩賜賞受賞、英国王立天文学会ゴールドメダル授与、第一回文化勲章受章など栄誉多数
定年後は東京で家族と居を構えながら、Z項に関する論文を書き続ける
昭和18年(1943年)9月26日逝去
栄の業績といえば、Z項の発見が特に有名であり、常設展示でも金沢(学生)時代のスーパー神童伝説やたくさんの栄誉とともに紹介しています。
今回の特別展では、栄が人生の大半を費やしたZ項の謎の探求や生涯で最も住み続けた第二の故郷・水沢(現・岩手県奥州市水沢)での生活といった、「Z項発見後の栄」をフォーカスしています。
そして、30周年という記念の特別展ということで、「木村栄」「天文学」をキーワードに、「つなぐ」をテーマにして、より大きな枠組みから展示を構成しています。
展示では栄が何と何をつなぐのか、いくつかの軸を見ていきましょう。
X軸
栄にとって水沢は、Z項を発見した栄光の地であり、生涯で最も住み続けた場所であり、まさに第二の故郷でした。
水沢には今も栄の遺したたくさんの遺産が息づいています。
街中に”Z”があふれ、緯度観測所を前進とする国立天文台水沢VLBI観測所があり、木村榮記念館・奥州宇宙遊学館など顕彰・普及活動にも力を入れています。
栄を育み、天文学者を目指すきっかけを生み出した故郷・金沢
Z項を発見した場所であり、栄が愛し愛された第二の故郷・水沢
木村栄がつなぐ金沢と水沢という二つの街―これが特別展のX軸です。
Y軸
次に、栄のZ項の重要性を語る上で必要なのが当時の時代背景です。
近代という時代の大転換期に生きた栄。
栄以前と栄以後、日本の天文学界はどのように変貌したのか。
金沢に目を向けてみると、栄誕生以前の近世加賀藩でおこなった天体観測資料が数多く残されています。
一方水沢では、栄が遺した緯度観測所が国立天文台として今なお新たな挑戦を続けています。
始まりの地である金沢における近世の天文学
栄が遺した水沢における現代の天文学
木村栄がつなぐ過去と未来―これがY軸です。
Z軸
栄のZ項の発見、そしてその後の活躍は、周囲の人々の支えなくしてはありませんでした。
師匠、研究仲間、職員、友人、家族―温厚で優しい(それでいてアクの強い)性格で知られた栄の周りには、いつも彼を支えてくれる人々が集まってきました。
栄の研究と遺志は下の世代へ受け継がれ、過酷な時代を乗り越えてやがて大輪の花を咲かせることになります。
栄がつなぐ人々の思いと絆―これがZ軸です。
ということで、X(地域)Y(時間)Z(人)という3つの軸の中心に木村栄を据えることで、栄の生涯に限定されない大きな視点で「偉人・木村栄」を描き出していく、というのが今回のテーマです。
じゃあタイトルも「XYZ」でええやんか
そうですね、ちょうど大好きな某漫画の映画もやってますからね。
そっちでも良かったのですが、某大河ドラマと同じタイトルにしました。
なんかカッコイイじゃないですか
なお「天地人」という言葉、日本国語大辞典には「天と地と人。宇宙間の万物。」と掲載されています。
宇宙間の万物……
そう、もう一つのキーワード「天文学」を引き立たせるためにこちらを採用したのです(半分後付け)。
実際、今回の展示では栄の生涯だけではなく、
・近世金沢の天文学
・現代の国立天文台水沢の宇宙工学
というふたつも大きな柱となっていますので、「天」ひいては宇宙をイメージするタイトルにしたかったというのはあります。いわば、
宇宙の「壮大さ」みたいなものを感じてほしい
といいますか、30周年らしい壮大さを出したかった所存です。
ここまでをまとめると
木村栄でつなぐ「地域」「時間」「人」
壮大な天文学の世界
このふたつの要素を資料と解説から描き出すことで、栄の業績や人柄・天文学の魅力を来館者にお届けする―これが今回の展示コンセプトになっています。
実際にはどんな感じの内容になったのか、(下)で紹介したいと思います。